華氏911とザ・クラッシュ
華氏911というか、マイケル・ムーアと
「クラッシュ」のジョー・ストラマーは似ている。
表現者としてのスタンスがだ。
ザ・クラッシュというバンドを覚えているだろうか?
1970年代後半のロックシーンを駆け抜けたパンク・ロックムーブメントを代表するバンドである。
パンクというとセックス・ピストルズのほうが知名度も高いし、一般的にパンクファッションといわれる様式の服装もピストルズなどの衣装や髪型を指す。
ちなみにピストルズのマネージャーのマルコム・マクラレンの妻は今では超有名なデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドだったりする。
ピストルズの衣装は全てウエストウッドのデザインで、マクラレンの経営するブティック『SEX』はウエストウッドのデザインを独占的に扱うショップだった。
つまり妻のデザインした衣装を着せて、夫が金を儲けて、妻も名声を得たわけだ。
クラッシュとピストルズは本当によく比較される。
音楽ライター達はカテゴライズするのが好きだからね。
カテゴライズしないと安心できないらしい。
なぜ私が華氏911とザ・クラッシュを同等に語っているのか?
それは両者に共通する滑稽なまでの誠実さ故である。
パンク・ロックは過激な歌詞や暴力的なステージ等、センセーショナルなイメージが先行していたが、本質は音楽業界、ひらたくいえばロック産業の民主化運動だった。
若者の退屈な日常のはけ口と表現手段であったロックだが、産業として成立していく段階で巨大資本に飲み込まれ、ロック本来のシンプルな衝動は抑えられてしまい“売れる曲を売れるバンドに演らせる”という公式が確立されてしまった。
『産業ロック』の誕生である。
そんな若者の日常とかけ離れてしまったロックを再びレコード会社から、当事者であるバンドや若者の手に取り戻そうという“ロック・ルネッサンス”がパンクなのだ。
そしてパンクの理念を前衛で体現していたバンドこそ『ザ・クラッシュ』だった。
クラッシュの中でもヴォーカルのジョー・ストラマーはパンクの殉教者であり権化だった。
クラッシュと同時期に誕生した無数のパンクバンドの多くは数年のうちに消滅し、生き残ったバンドは商業バンドへと変貌とげていった。
パンクに関わったバンドやファンのほとんどがそんな風に理想を失っていく中で、最後までパンクの砦を守ろうとしたクラッシュ。
商業的な成功と芸術面での評価に加え、パンク本来のイメージを守りとおし、微妙なバランスを使い分けていたのがクラッシュ。
そこんところがマイケル・ムーアと酷似している。
どんなに優れた作品やメッセージでも他人に知ってもらえなけりゃ全然意味が無い。
ムーアもクラッシュもそれを知りえており、実践している。
パンクの灯を守り続けたクラッシュがその後どうなったか?
徐々にバンド内の意見の対立が表面化。
政治的なメッセージを発し、体制との対決を継続しようとするジョー・ストラマー。
ロックバンドとしての成功をもとめ政治性との決別を図ろうとしたミック・ジョーンズ。
2人の対立はバンドを崩壊に導いていった。
最後は少し尻すぼみなクラッシュ。
ミック・ジョーンズはバンドを去り、
ドラムのトッパー・ヒードゥンはドラッグに溺れていった。
反体制的な表現者であり商業的な成功者でもある、
ムーアとストラマー。
ストラマーは傷つきながらも戦い続け結果的には敗れ去った。
はたしてマイケル・ムーアは?
追伸:ジョー・ストラマーの冥福を祈ります。
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