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2004/11/01

核戦争を待望する人々

 『核戦争を待望する人々』という本が面白い。
 十数年前に朝日選書から発売されていた海外ノンフィクションの翻訳版です。
 タイトルだけだとなんじゃ?となってしまうが、極めて真面目で寒気のする内容の本なのです。
 副題が~聖書根本主義派潜入記~となっていますので、ピンッと来た方も多いのでは?

 簡単に言えば、現在のアメリカ社会で大きな勢力を誇り、政治や経済に絶大な影響力を持つ“福音派キリスト教徒”の狂気じみた実態を暴いたドキュメントなんです。

 聖書の説くこの世の終末(ハルマゲドン)、キリストの再臨は、核戦争でしか可能にならない―とする右翼キリスト教派・聖書根本主義派は、現代アメリカの大衆はもとより政界にも少なからぬ影響力を持っている。
 恐るべきハルマゲドン幻想に踊り、その舞台となるイスラエル支援に熱中する人びとの生態をビビッドに描く。(朝日選書より)

 どのくらい福音派キリスト教徒が異常な信仰をもっているかというと、

①世界は神が作った

 聖書に記されている範囲が世界の歴史の全てである。したがって宇宙全体は誕生してから数千年、古く見積もっても1万年くらいである。恐竜やマンモスの化石は「神様があらかじめ作ってワザと地中に埋めておいた」

②基本的に地動説は否定

 地球は本当は平面で天球が空を回転している。ガリレオやコペルニクスは大嘘つき。スペースシャトルや人工衛星からの映像での地球は丸いが、それは「神様がそういう風に見えるように配慮されている」

③これも当然だが進化論は否定

 ダーウィンは背信者。人間は神に似せて作られたのであり、全ての生物は現在の形をもって完成形として出現した。「キリスト教徒が下等な有色人種の仲間のサルから生まれたなんて嘘だ」

 上記の内容は一般的にも知られている福音派キリスト教一派の教義だが、この他にも愉快な?聖書の解釈がたくさんある。

 たとえば生殖をともなわないセックスは神の教えに反するそうである。
 アフリカではエイズによって存亡の危機に立たされていて、シャレにならないくらい深刻な状況だし、アメリカ国内でもエイズは依然大きな問題には変わりないはずだ。
 しかし、福音派キリスト教ではセックスでコンドームを使用することは異端行為なのだそうだ。
 エイズに2次感染した子供をバンバン産んで、膨大な医療費と社会保障費によって国家財政を破綻させるのが目的なのかと疑いたくなる。
 それとも、エイズのような難病は“根治の困難な病”である必要があるのかも。
 巨額献金している製薬会社のために。

 『核戦争を待望する人々』では右派キリスト教徒がなんで異教徒であるはずのユダヤ人(イスラエル)を支持するのかが一撃のもとに解き明かされている。
 ユダヤ系資本がどうのとか、中東の石油支配がどうのとか難しい理屈ではないらしいんですよ。
 答えは簡単、〝神の御意志〟

 聖書の教えによると、この世の終わりにはキリストを信ずる軍勢と異教徒の軍勢がメギドの地で最終戦争をすることになっている。
 これがいわゆる「ハルマゲドン」
 戦火は世界中を巻き込み人類は絶滅に瀕するが、聖書を信ずる者は神の救いにより天国に引き上げられ、異教徒は救われること無く戦火で焼かれ死に地獄へと転落する。
これがいわゆる「最後の審判」

 この世界最終戦争がおこるには重要な条件がある。
 それはユダヤ人国家の存在。
 聖書の記述では、国を失い世界に散ったユダヤ人が再び約束の地に結集し、自らの国家を成立させた時がこの世の終わりを告げる予兆とされている。
 キリスト教原理主義者からするとイスラエル国家の樹立はまさに聖書の導きどおりなのである。

 これでお分かりかと思うがアメリカの右派キリスト教徒は何もユダヤ人にシンパシーを持っているのではない。
 何世紀にもわたる流浪の生活を強いられたユダヤ人に同情しているのではない。
 いやらしいまでに露骨にアメリカがイスラエルを支持するのは、約束された戦争が開戦されるために必要不可欠な舞台を失いたくないだけなのだ。
 聖書の教えのためならパレスチナ人がどのぐらい死のうがお構いなし。
 自分達の信奉する教義を強大な武力や膨大な財力を投資して実現させようというのは既に「カルト」といっても過言ではない。
 最終目的が核戦争というのも常軌を逸している。

 『核戦争を待望する人々』でも明かされているように、キリスト教右派が凄まじく極端な信仰を持っていようと、アメリカ国内に膨大な信者を抱えていようと、異常な願望を実現する 可能性が無いのであれば何の脅威でもない。
 しかし聖書根本主義派は大きなパワーを持ってしまった。
 キリスト教右派の支持を取り込み、自らも狂信的なプロテスタントであるレーガンが大統領に就任。
 政権の中枢を聖書根本主義派で固め、政策の根幹となる価値観にハルマゲドンの到来を目標としたのだ。
 政教分離、信教の自由とはいいながらも着実に宗教的価値観の保守への一極化を突き進む“宗教国家アメリカ”

 十数年前に出版された本ですが、恐ろしいほど現在のアメリカ国内の状況に似ているでしょ?
 ブッシュとレーガンが入れ替わっただけなんだから。

 現在は絶版らしくて入手できないみたいです。
 だけど、再販したらすごく受けると思うんですけどね。
 朝日新聞社さん検討してみてはいかが?

 『核戦争を待望する人々』の著者は体当たり突入ドキュメントが得意らしくて、キリスト教原理主義者の実態を肌で感じる為に、実際にある教団に入信し信者の振りまでしているから最高。
 おまけに聖地エルサレム巡礼ツアーへも教団の皆さんと一緒に参加。
 その中での信者と著者の会話が興味深い。

たしかこんな会話
↓↓↓

著者
“本当に最終戦争が開始されたら大変ですね。”

信者
“ええ、とても恐ろしい事でしょう。だけど私は何の恐怖も感じません”

著者
“戦争はきっと核戦争ですよ。誰も生き残れませんよ。”

信者
“大丈夫ですよ!どこにいても核戦争が始まったとたんに神様が天に持ち上げてくれますから。”

 ウーン、信教の自由は保障されるべきなんだけど・・・
 世界最大の軍事力を保有し、その軍隊の最高司令官たる大統領が中世暗黒時代さながらの宗教的価値観を重要視しているのは問題だ。

 街をあるけば日本にだって、ちょっと精神が飛んじゃっているとしか思えない宗教家の皆さんや団体様に出会える。
 しかし、彼らがどんなに狂信的だったとしても、そのほとんどは弱小教団である。
 異常な願望を実現するだけの政治力や権力は持ち合わせてはいない。
 かつてのオウムにしても世界戦争を起こすだけの勢力には成り得ただろうか?

 アメリカの恐ろしい現実は、神の意志の名の下にハードロックやポルノ、リベラル派や平和運動家に対する中世の宗教裁判さながらの弾圧と嫌がらせが本当に行われていることであり、世界最終戦争を起こしたいと願ってやまない宗教勢力の支持を受けているブッシュが大統領職に就いていることなのだ。

 ブッシュは現在「テロとの戦争」との名目で確実に戦線を地球全体に拡大している。
 世界戦争実現までもう4年がんばるのかブッシュ?

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コメント

ブッシュとネオコンが目指しているその「先制核ハルマゲドン」
への第1歩が、無法なイラク侵略と占領です。
だからそれを挫折させることが出来れば、「先制核ハルマゲドン」は未然に防止できるんです!!
だからイラクへ日本軍を派遣して日本人を共犯者にしている小泉の対米買弁路線は、亡国路線なのです。
サマワの駐屯兵営は間もなく攻撃されて、戦死者が出るでしょう。
何度も警告射撃したわけですから。
自民党内からも12月14日以後は延長しない方が良いという意見が出て、小泉は「国会議論と世論の動向を見て決めます」と、動揺しています。いまが追撃のチャンスです。
買弁日本軍はイラクからすぐ撤退せよ!!

投稿: 前田 進   | 2004/11/04 02:55

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