フレディ・スペンサーの思い出
“キング”ケニー・ロバーツが王者として君臨した70年代後半から、ケヴィン・シュワンツなどが活躍した80年代後半くらいまでのことだ。
今では信じられないファンも多いだろう。
とにかく強かったのだ。
豪快なマシン操作と圧倒的なスピードのアメリカンライダーは『バイク文化の本流』を自認するヨーロッパ人を狼狽させたのであった。
バカっ速のアメリカンライダー達の中でも異彩を放っていたのがスペンサーだ。
“ファスト”フレディ・スペンサー
なんて素晴らしい響きだろう・・・
いかに長時間アクセルオンの状態でコーナーを曲がれるか?
どうすればマシンの向きを無理やり変えれるのか?
限界までリアタイヤをスライドさせてやる!
そんなことを常に考えているとしか思えないライディングなのだ。
スペンサーは83年にGP500ccクラスの王者に輝いている。
ケニーとの激戦を展開したこの年度のGPシリーズは、いまだに伝説として語り継がれている。
まさに歴史に残る83年の戦い。
フレディが駆るマシンはホンダNS500(V型3気筒)。
対するケニーはヤマハYZR500(OW70,V型4気筒)
パワーに勝るヤマハYZR500に対し、NS500は加速と旋回性能で勝負するのだった。
2人のタイマン勝負は最終戦までもつれ込み、2ポイント差でフレディがチャンピオンシップを制したのだった。
しかもフレディは最年少でGP500を制したライダーとなったのである。
バイクとしてのNS500は個人的には大好きである。
コンパクトな車体にV型3気筒という軽量ユニットを搭載するユニークな発想はとても独創的。
ホンダらしい仕事ですね。
しかし、YZR500(OW70)と比較した場合、パワー不足は否めない。
やはり、2ストといえばヤマハなのである。
最高速の伸びは見ているだけで気持ちがよくなる。
絶対的なパワーで劣るマシンを振り回し、キングとOW70という無敵のコンビに勝負を挑み勝利をもぎ取った83年は、未来永劫まで語り継がれるバトルが展開された年であり、“キング・ケニー”が引退し、フレディという超絶的技法でバイクを操る男が今後のWGPシーンを支配し続けることを予感させるに十分なインパクトを残した年でもあった。
翌年の84年は、新型NSR500の不調や、フレディの『暴走』というかオール・オア・ナッシングな走りで自滅を繰り返し早々にチャンピオン争いから姿を消してしまうのだった。
そして85年シーズンである。
フレディはこの年、誰も成し遂げることが無かった前人未到の戦いに挑んだのであった。
なんと、同一年度に500ccと250ccという2つのクラスにダブルエントリーしたのである。
フレディ以前にも2つのクラスを制したライダーは存在した。
しかし、フレディ以前のそれは同一年度ではない。
しかも決勝レースは勿論、同一開催日に実施される。
各クラスのインターバルはわずかな時間しかない。
楽に勝てる相手などはいなかった。
ケニーは去ったが“ステディ”エディ・ローソンがヤマハのエースとして君臨していたし、250ccにもカルロス・ラバードという才能あるライダーをヤマハは擁していた。
しかし、フレディは無謀ともいえる戦いを見事に戦い抜き、前人未到の500ccと250ccのダブルタイトルを獲得したのだった。
この瞬間、誰もがフレディの時代が始まったと確信したはずである。
フレディは全てのGPライダーの前に立ちはだかる巨大な存在だと信じたはずだ。
この後フレディの輝きは急激に失われていく。
無敵のチャンピオンどころかコンスタントにレース活動を継続することすら困難な状態になってしまったのだった。
はっきりとしたことは不明だが、「燃えつき症候群」である可能性は高い。
「天才のきらめきは一瞬」という言葉がある。
フレディが燃え尽きたとは思いたくないが、まともにレースに打ち込める精神状態ではなかったのは事実であろう。
神から与えられた才能を限界ギリギリまで凝縮し、一気に解き放ち燃焼しつくした男。
それがフレディ・スペンサー。
『あしたのジョー』の矢吹丈とフレディ・スペンサーは私の中でどうしてもだぶってしまうのだ。
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コメント
83年のWGPは、永遠に語り継がれる名勝負ですね。
フレディは、燃え尽き症候群ではなく
転倒した時の軟骨が
遊離骨折(今でいうネズミ)したものを
除去できなかったため
右手の感覚が鈍くなり調子を崩した様です。
今の医学レベルなら簡単に治療できたでしょう。
病気の原因がわからない葛藤が
フレディを貶めたと思います。
ちなみに、上記の写真のゼッケン8番
ケニーの後ろ3番手を走っているのは
日本人 片山敬済です。
日本人初代年間ワールドチャンピオンです。
今はない350ccクラスですが。
投稿: どにゅ | 2008/12/29 09:12