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2007/05/19

狼たちの午後

 『狼たちの午後』(DOG DAY AFTERNOON)は1975年に制作された映画で、私の大好きな映画のひとつ。

     Dog_day_afternoon_01

 アル・パチーノ主演。共演はジョン・カザール。

 どんな映画かと一言で表現すると、間抜けな銀行強盗と、ストックホルム症候群になる人質の銀行員の物語なのです。

 何が、どんな風にマヌケかと言いますと、

とにかく無計画な強盗計画なんですね。

 銀行を襲撃してはみたものの、現金は輸送されてしまっていて、金庫は空。

 一緒に強盗に入った仲間の一人は、強盗開始直後に怖くなって離脱。

 しかたなく女性行員数人を人質に立て篭もるのですが、すぐに警察にばれて取り囲まれるわ、マスコミや野次馬は押しかけて来るわで、引っ込みがつかなくなっちゃうのです。

 出演者のキャラクター設定も面白いのです。

      Dog_day_afternoon_07

 主犯格のソニーを演じるのはアル・パチーノ。

 ソニーは妻子がありながらも、実は同性愛者で、強盗で得た資金を元手に愛人(当然ですが男)を海外で性転換手術を受けさせてやりたいと願っています。

 共犯のサルはジョン・カザール。

 『ゴッドファーザー』でも次男のフレドを演じていた良い役者さんでした。

 サルは精神的に弱いというか、神経過敏な設定で、篭城が長引くにつれ、あからさまに神経衰弱の症状があらわになっていきます。

  Dog_day_afternoon_02

 そして驚くべきことは、『狼たちの午後』は“実際にあった事件”だということ。

 映画では事件の内容をかなり忠実に再現しているとのことです。

 様々なことが篭城中に起きます。

 ソニーが警察の交渉人と対峙するシーンで、ソニーは銀行を取り囲む狙撃隊を下げさせるように要求するのですが、その時に群集に向かって〝アティカを忘れるな!〟とアジテーションします。

 〝Remember Attica !〟

 日本人にとっては何のことやら意味不明なシーンなのですが、アメリカ人にとっては重要な意味を持つシーンです。

 “アティカ”(Attica)というのは本当に存在するアティカ刑務所のことを指しています。

 そのアティカ刑務所では、収容されていた囚人達が待遇改善などを求めた暴動事件が起こったことがありまして、その時に鎮圧に当たった刑務所側が銃を乱射したために大勢の囚人達が死んだのでした。

     Dog_day_afternoon_04

 当時のアメリカではかなり衝撃を持って伝えられた事件で、社会的に関心の高い事件だったのです。

 John Lennonも〝アティカ・ステート〟って曲を作っていますしね。

 野次馬の反応を見るからにして、当時の人々にとってはアティカ事件は生々しい記憶であり、警察は信用できないんだという思いが伝わってきます。

 大々的に報道されたことで、ソニーとサルは一時的に英雄に祭り上げられます。

 また、人質である銀行員達がソニー達に親近感を覚えて、犯罪者としてではなく、普通の人間として接するのも興味深いですね。

 ストックホルム症候群の典型的な事例といえます。

 しかし、篭城が長時間になるにつれてソニー達は打つ手が無くなり、最終的な決断を迫られ、身の安全の保障と海外への逃亡を求めます。

          Dog_day_afternoon_08

 アメリカ国外に逃げようというのです。

 このシーンでのソニーとサルの会話が泣ける!

 警察が高飛び用の航空機を用意したので、どこに逃げるかのかを2人が検討します。

 ソニーは案外楽天的で、高級リゾート地にでも行くような感覚なのですが、サルは神経が磨り減ってしまっているので、沈痛な表情を浮かべています。

〝どこの国に行きたい?〟というソニーの問いかけに対して、サルが答えたのは、

〝ワイオミング〟

ソニー

〝サル・・・・ ワイオミングは外国じゃないよ〟

 いい場面でしょ?

 映画の中でサルのパーソナリティが語られることはあまり無いので、サルの人柄というか生い立ちが垣間見れる貴重なシーンなのです。

       Dog_day_afternoon_05_1

 冗談抜きでワイオミング州が外国だと思っているサル。

 それにしてもワイオミングとは・・・・

 そしてクライマックス。

 ソニーとサルは数人の女性行員を人質にとって、警察の用意した車で逃亡用の飛行機がまつ空港へ向かいます。

 あと僅かで逃亡が成功すると、ソニーは気分が高揚していますが、サルは極度の緊張状態。

 飛行機を目前にしてサルが一瞬気を緩めた瞬間、サルは運転手に額を銃で撃ちぬかれて死亡します。

 極度の緊張状態にあるサルは危険であると判断され、サルを殺害するするために最初から警察が仕組んだことだったのです。

    Dog_day_afternoon_06

 うちひしがれるソニー。

 エンドロールでソニーは現在も服役中であることが述べられています。

 どんな思いでサルが銀行強盗に加担したのかは不明ですが、私はサルのことが哀れでなりません。

 『狼たちの午後』を観終わった後に、感動とか爽快感は残りません。

 だけれども、感動という安易な言葉では言い尽くせない、なんともいえない熱い思いが胸に迫ってきます。

 必見の映画です!

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