家畜人ヤプーの作者?沼正三さん死す?
“この小説で感心するのは、前提が一つ与えられたら世界は変わるんだということを証明している。普通にいわれるマゾヒズムというのは、屈辱が快楽だという前提が一つ与えられたら、そこから何かがすべりだす。すべり出したら、それが世界を被う体系になっちゃう。そして、その理論体系に誰も抵抗できなくなってしまう。もう政治も経済も文学も道徳も、みんなそれに包み込まれちゃう。そのおそろしさをあの小説は書いているんだよ”―三島由紀夫氏の当時のコメント
『家畜人ヤプー』は恐ろしい小説です。
2000年後の未来世界では熱核戦争でほとんどの有色人種は死に絶え、イギリス人を中心とした白人女権国家が、宇宙帝国イース(EHS)を形成し君臨しているのでした。
そんな未来社会においても日本人は存在しています。
しかし人間としてではなく、様々な肉体改造を施され、白人女性に使役される従順な「家畜」ヤプーとして存在しているのです。
黒人も登場します。奴隷という扱いですが、一応人間とみなされています。
しかし日本人は奴隷以下の、タイトルどおりまさしく「家畜」
自分達が奴隷であることに疑問を持つことすら無く、白人女性に奉仕することにのみ、喜びと存在意義を感じる、まさしく飼いならされた「家畜人」
日本人=ヤプーは、牛や馬、犬や猫と同様、愛玩用や食肉用、使役用として役所に登録し、市場で売買され、優秀なヤプーを生産するためにサラブレッドのように近親交配も強要されます。
“雄”のヤプー=日本人男性は去勢されます。
“雌”のヤプー=日本人女性は、白人女性の子供を産むために、子宮を提供し、受精卵を移植され、妊娠させられます。
原型をとどめないほどに肉体を改造され、生きたままの状態で家具や生活用品にされてしまうこともあります。
さらに恐ろしいことに、日本人に文明をもたらしたのは、未来世界イースからタイムマシンで日本を訪れたアンナ・テラスという白人女性だということ。
古代の日本人はアンナ・テラスを女神として崇めるようになり、後にアンナ・テラスは日本神話の主神、神道の信仰の中心である天照大神と化したのです。
このことによって、日本人の深層意識下には、無条件に白人女性を崇拝し、白人女性の陰部や陰毛を崇める、『御仏信仰』も生まれたというのです。(女性の陰部や性器のことを“ほと”っていいます。つまり、“ほと”に生えている毛だから「みほとけ」)
国生みの神話の時点から、日本人はヤプーとして、白人女性に隷属することだけを宿命付けられ、家畜となるため育成されてきたことが明らかになります。
気持ちのよい小説ではありません。
民族派とか右翼を自称する人にとっては、受け入れ難い内容が満載です。
ただし、思想的なこと云々を抜きにして考えても、見事に完成され緻密に構成された、情景が浮かんでくるような未来社会。とめどなくあふれ出てくる言葉のマジックによるイリュージョン。価値観がひっくり返ってしまえば存在意義すら無意味になる恐ろしさ。
三島由紀夫の言葉を借りるまでもなく、戦後文学の絶頂であることに異論はありません。
※康芳夫さんプロデュースで映画化されるって話がありましたが、製作は進行しているのでしょうか?すごく気になります。
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